先月27日にニュースとして報道された、毎日新聞や朝日新聞等の記事によると、室町幕府初代将軍・足利尊氏の没後間もない14世紀末に描かれたとみられる、尊氏の肖像画の写し(下の画像)が発見されました。
今回確認された「足利尊氏像」は、個人が所有しているもので、栃木県立博物館の本田諭特別研究員や鎌倉歴史文化交流館の高橋真作学芸員などが、資料調査の際に発見しました。
大きさは縦88.5センチ、横38.5センチで、軸装された画の下側に正装して着座する人物が描かれており、上方には十数行にわたって画中の人物の来歴が文章で綴られています。
その文章の中に、尊氏を示す「長寿寺殿」という言葉があり、また、尊氏の業績として知られる国内の66州に寺や塔を建立した旨が記されている事などから、この度、尊氏の肖像画であると判断されました。
下の画像は、その尊氏の肖像画写しの、顔の部分を拡大したものです。大きな鼻と垂れ目が特徴的ですね。
室町時代以前に描かれた事が確実な尊氏の肖像画は、他には広島県の浄土寺が所蔵している「絹本著色(ちゃくしょく)足利尊氏将軍画像」(下の画像)があるのみで、また肖像画以外では、室町幕府第2代将軍の足利義詮(よしあきら)が14世紀に京都の東岩蔵寺に奉納したと云われている「木造足利尊氏坐像」(大分県安国寺蔵)があるだけで、そのため尊氏の顔だちを巡っては今まで意見が分かれてきました。
しかし今回の発見により、今まで分かれていたそれらの意見がまとまる可能性も高く、専門家達は以下のようにコメントしています。
「尊氏の顔がこれではっきりした!」
「垂れ目や大きな鼻の特徴が、2つの作品(前出の、浄土寺蔵の尊氏肖像画や、安国寺蔵の木造の足利尊坐像)と似ている。尊氏はこの通りの顔つきをしていたのでは。意見が分かれる尊氏の顔立ちを伝える貴重な資料だ」
「木像の顔貌(がんぼう)と似た肖像画が出現したのは、尊氏像の議論にとっても重要な発見」
ちなみに、今回発見されたこの肖像画の写しは、宇都宮市の栃木県立博物館で今月29日まで公開されるそうです。
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