先月中旬、2泊3日の日程で関西を旅行してきた際、私は、先月22日の記事先月28日の記事などで詳述したように、足利尊氏が鎌倉幕府討幕の旗あげをした地として知られる篠村八幡宮や、その尊氏の墓所と歴代足利将軍の木像がある、足利将軍家の菩提寺・等持院など、尊氏所縁の社寺を訪ねましたが、両社寺を参拝・見学した後は、京都の太秦にある、映画・テレビ・舞台演劇用小道具や美術装飾を扱っている「髙津商会」という会社に行って来ました。
そして、同社のスタジオで、武将体験(武将の本格的な甲冑の着付けを体験)をしてきました。

髙津商会の甲冑

同社では、武将体験用としていくつもの種類の本格的な甲冑を用意しているのですが、それらの中では、平清盛をイメージした甲冑だけが唯一、平安時代末期頃の大鎧を再現したタイプで、それ以外の甲冑はいずれも、戦国時代の人気武将達(武田信玄、上杉謙信、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、加藤清正、伊達政宗、石田三成、真田幸村、黒田長政、直江兼続、本多忠勝など)をイメージして再現されている当世具足でした。
太平記の時代が好きな私としては、昨年6月23日の記事で紹介したような南北朝時代タイプの甲冑を着てみたかったのですが、生憎そういった甲冑は用意されていなかったので、今回は、南北朝時代の甲冑に比較的近いと思われる、平清盛タイプの大鎧を選んで着てみました。

ちなみに、日本の甲冑は、大別すると、概ね以下の5期に分ける事が出来ます。
第1期は、弥生時代から平安時代前期までの期間で、短甲・挂甲・綿甲・革甲に衝角付冑・眉庇付冑・綿襖冑の時代。
第2期は、平安時代中期から鎌倉時代後期までの期間で、大鎧・胴丸・腹当に厳星兜・小星兜・筋兜の時代。
第3期は、鎌倉時代末期・南北朝時代から室町時代中期までの期間で、大鎧・胴丸・腹巻・腹当に筋兜・阿古陀形兜の時代。
第4期は、戦国時代から安土・桃山時代までの期間で、胴丸・腹巻・当世具足に多種多様な胴と兜の時代。
第5期は、江戸時代初期から幕末までの期間で、当世具足・復古調の時代。

この分類に従うと、私が個人的に装着したかったのは第3期の甲冑で、しかし、髙津商会で武将体験用として用意されていた甲冑は大半が第4期の甲冑で、その中で唯一あった第2期の甲冑を、今回私は装着した、という事になります。
以下に、その甲冑(大鎧)や、(僭越ながら)それを着た私の写真をアップします。

武将体験_01

武将体験_02

武将体験_03

武将体験_04

私が着た甲冑は、デザイン性と共に機能性や軽快性も重視されている戦国時代の当世具足とは違い、騎馬(騎射)戦にほぼ特化している大型・重厚な大鎧なので、一式で20㎏近くもの重さがありました。
そのため、着装した直後こそ「少し重いかな」と感じる程度でしたが、時間が経つに連れ、段々ずっしりと重さを感じてきました(笑)。

武将体験_05

武将体験_06

第4期(南北朝時代など)の甲冑は、徒歩戦での刀剣や槍などによる接戦を想定した作りになっていますが、私が着た第3期の甲冑の時代(平安時代末期頃)は、刀剣よりも弓矢のほうが主要な武器であったため、この甲冑に合わせて実際に弓矢(レプリカですが)も構えてみました。
但し、弓矢に明るい人が見ればすぐに気が付くと思いますが、以下の写真での私の左手の人差し指の位置は、本当は間違いです。矢に指は掛けないのが正しいのですが、恥ずかしながら、人差指で矢をしっかりと抑えないと、弦の張力が強くて矢を固定出来なかったのです…。

武将体験_07

武将体験_09

折角なので、小道具も借りてみました。私が手に持っているのは、戦場で軍団を統率する際に用いられる「采配」です。
ちなみに、采配は、映画や大河ドラマなどでは攻撃の合図に使われるお馴染みのアイテムですが、実戦で使われる事は、実際には極めて少なかったと云われています。

武将体験_10

武将体験_11

私は、衣冠という装束(平安時代以降の貴族や官人の宮中での勤務服)を着た事もありますが(下の写真がそれです)、実際に衣冠を着てみた感想としては、衣冠は立体的にではなく平面的に採寸・仕立て上げられている装束であるため、衣冠の著装は「着る」というよりは、細かく微調整をしながら自分の体に合わせて折り畳んでいく(綺麗に整えていく)、というような感じでした。
それに対して甲冑の着装は、衣冠とはまた違い、細かく分かれたパーツを定められた順番に従って自分の体に次々と付けていく、というような感じでした。

衣冠姿

甲冑を着装したのは今回が初めてでしたが、私にとってはなかなか興味深い体験で、面白かったです。
ただ、衣冠は何十回も着た事があるので自分一人でも著装出来ますが(作法としては衣冠を一人で着るのは正しくありませんが)、甲冑は、さすがに一人で着る事は出来そうにありません…。


にほんブログ村 歴史ブログ 鎌倉・室町時代へ

にほんブログ村